スパイドラマ倶楽部・別館-スパイ大作戦専門館



エピソードガイド1



5 大量殺戮者 Operation Rogosh
【目的】大量殺人の計画を突き止めるとともに、それを粉砕し幾千人の命を救うこと
【指令】おはよう、ブリッグス君。その男はイムリー・ロガッシュといういわば怪物的な存在である。彼は大量殺人によって社会を混乱に陥れるその方面のエ キスパートだ。それは彼の犠牲になった北アフリカ、ポンベイ、リオデジャネイロの各地であるが、実はそのロガッシュがロサンゼルスに一週間ばかり滞在し ていることがわかったのだ。そして本国へ帰る明日の晩の飛行機の切符を買った。これまでの例から推して、ロガッシュが立ち去った後、ロサンゼルスから 幾千人の犠牲者が出るものと当局はみている。
 そこで君の使命は、一刻も早くロガッシュの計画を突き止めるとともに、それを粉砕し幾千人の命を救うことにある。終わったらこのテープは処分してくれた まえ。成功を祈る。
【スタッフ】
脚本: ジェローム・ロスJerome Ross
製作: ジョセフ・ガントマンJoseph Gantman
監督: レオナルド・J・ホーンLeonard J. Horn
【ゲスト出演】
イムリー・ロガシュ:フリッツ・ウィーヴァー(大木民夫)Fritz Weaver as Imry Rogosh
医師:アラン・ジョセフ(浮田左武郎)Allan Joseph as Dr. Ira Green, M.D.
ラズロフ:チャールズ・マックスウェル(市村昌治)Charles Maxwell as Lazloff
クリミ大佐:ジェームズ・ランフィアー(永井玄哉)James Lanphier as Colonel Klimi
女性判事:スヴィア・グランフェルト Svea Grunfeld as Woman Judge
【場所】@指令(媒体):車の中のダッシュボードにあるテープカートリッジを焼却炉に投入して処分する
A舞台:ロサンゼルス
【役割】ダン:救急隊員→ロベック(頼りにならない弁護士)
ローラン:検察官→クリミ大佐に変装
シナモン:アカーピン(ロガッシュの秘書兼愛人)
バーニー:警官→ラジオのニュースキャスター→反逆運動で逮捕された学生
ウイリー:ロガッシュを尾行→刑務所の監視員
【道具】@睡眠剤の注射:ロガッシュに投与
Aフラスコに仕掛けた時限装置:実はメトロノームの音
【削除】(08分50秒)監房から警備兵に向かってロガッシュが叫ぶが、誰も気づかない
(24分50秒)記憶喪失中の期間のことをダンがロガッシュにいろいろと尋ねる
(38分50秒)裁判で秘密工作の内容をロガッシュに言わせようとする
【見所】(16分20秒)ロガッシュが鏡を見ると、白髪交じりになっていて月日が経ったと錯覚する
(23分30秒)ダンよりアメリカのスパイを働いた罪で刑務所にいることを告げられるロガッシュ
(26分50秒)敵側もロガッシュを発見し、クリミはラズロフにロガッシュ殺害を命じる
(30分30秒)ロガッシュがシナモンにバクテリアの話をし、何人死んだか詰め寄る
(34分40秒)バーニーがロガッシュにLAで何千人も死者が出たことを言う
(40分40秒)ロガッシュを射殺しようと、刑務所に侵入してきたラズロフをウイリーが殴り倒す
(43分20秒)最後の隠し場所を言おうとした矢先、ロガッシュは倒れた椅子の裏のシールを発見してしまう
(45分50秒)監房で3個所から回収したフラスコをロガッシュに見せ、4個所目を聞き出す
【疑問点】@法廷に置いてある椅子が倒れた時に、椅子の裏に貼ってあるシールにロサンゼルスの名前が書いてあったことから、すべてがいかさまであるこ とがロガッシュにばれてしまった。IMFの事前のチェックが甘いのでは?
【粗筋】ロガッシュを交通事故でさらうという大胆な作戦である。ロガッシュが目覚めると刑務所の汚い監房の中にいるということで、1968年という落書きや 白髪の増えた自分の姿を見て、どうやら自分が記憶喪失にかかり、3年間も何をしていたんだとロガッシュは悩む。また、入れられている刑務所もアメリカで はなく、本国のステフォン刑務所にいることと、自分がアメリカの諜報員として死刑にされることに気がつく。シナモンがロガッシュより細菌で殺戮計画を遂行 したことを聞き出す。さらに、ローラン扮するクリミ大佐が絞首刑にされるのを目撃してロガッシュは動揺する。その後裁判が開かれ、ポツリン菌で飲料水を汚 染したことによってアメリカで何千人も犠牲者が出たことをロガッシュは懸命になって主張し、自分の無実を晴らすべく訴えるのだ。チャッツワース、ストーンキ ャニオン、東ロサンゼルスのメイン水道管と3箇所まで暴露し、いよいよ最後の隠し場所を告白しようとした瞬間、椅子が倒れて現在いる場所がアメリカであ ることがばれてしまう。ロガッシュはすべてのからくりやトリックを敵ながら皮肉交じりに褒め称え、ダンがリーダーであることも見破ってしまう。これで、万事休 すかに見えたが、再度、IMFはロガッシュを密閉された監房に閉じ込め、3個所から回収したフラスコを爆破すると脅迫して、4個所目はガーベイ貯水池の水 門の下と聞き出すのだ。その後、用のなくなったロガッシュはIMFから解放されるが、クリミ大佐より"喋ったらどうなるかわかっているだろうな"と言われ、"し てやられました"とロガッシュはうな垂れる。バーニーはロガッシュが無事本国に帰れるかとダンに聞くが、ダンは駄目だろうなと結論づけるのであった。
【解説】このエピソードでは、時間のトリックが初めて用いられる。細菌兵器を仕掛けたロガッシュに対して交通事故を偽装して眠らせてしまい、気がつくと刑 務所の監房の中におり、3年の月日が経っているというのである。薬を使って意識を朦朧とさせ、壁には未来の日付が殴り書きされ、ロガッシュの髪の毛は 白髪交じりに染められる。また、入っている刑務所がアメリカではなく、自国の刑務所ということで、何故、自国の刑務所に入れられているのかロガッシュは 悩みに悩む。ロガッシュがあまりにも計画通りに行動するので、ダンはメンバーに"押し付けるのではなく、さりげなく行こう"と注意を促す。計画が順調に進ん でいても、ちょっとした油断から、すべてのトリックがパーになることを十分に認識しているからこそ言える発言で、ダンのIMFリーダーとしての資質がよく表現 されている部分でもある。
 そして、ロガッシュにとどめを刺したのは、ローラン扮する上官のクリミ大佐が絞首刑にされるのを目撃したことである。これでロガッシュは精神的に相当追 い込まれ、自分の裁判では無実を晴らすために、細菌兵器の隠し場所を3箇所まですらすらと暴露するのであった。ところが、4箇所目を言おうとして椅子が 倒れて、椅子の裏に貼ってあるシールから場所がアメリカだということがロガッシュにばれてしまう。こんな初歩的なミスをするのはIMFとしては珍しい。何で 念入りなチェックを事前にしなかったのか悔やまれる。結局、余分な労力を強いられて、ロガッシュより4箇所目の場所を吐かせるために拷問をすることにな る。
 最後に、バーニーがロガッシュについて無事本国に帰れるかと聞くが、ダンは駄目だろうなと結論づけ、敵国のスパイが任務に失敗した時の悲哀を見せつ けられる。アメリカのスパイも同様かどうかは語られない。
 時間のトリックは場所のトリックよりもショーの中における効果が劇的で、視聴者をも楽しませることができるため、今後、幾度となくIMFの戦法として登場す る。また、これまで「スパイ大作戦」を冷ややかに見ていた人も、このエピソードで注目するようになり、長年人々の記憶に残る代表傑作となった。このエピソ ードの脚本を書いたジェローム・ロスはアメリカ推理小説作家協会によるエドガー・アラン・ポー賞を受賞している。


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