スパイドラマ倶楽部・別館-スパイ大作戦専門館



エピソードガイド1



13 冷戦のダイナマイト The Trial
【目的】警察長官の冷戦に火を起こす計画を封じ、二度と政治的危機を引き起こさぬようにすること
【指令】おはよう、ブリッグス君。検察官であり秘密警察の長官であるヨセフ・ヴァーシュは、東ヨーロッパにおける危険人物の一人である。彼はまた冷戦に火 をつけようとする一派の闘士であり、共存派の副総理アントン・クドノフと鋭く対立している。ヴァーシュは目下、無実のアメリカ人に罪をなすりつけて逮捕しよ うと計画しており、この裁判を世界各国に公開して合衆国を刺激するとともに己の勢力拡張を謀ろうとしている。そのためそれに相応しいアメリカ人を物色中 である。ヴァーシュのこの計画が成功するや、無実のわれわれ同胞が犠牲になるばかりか、世界の平和は重大な脅威にさらされることになる。
 そこで君の使命だが、ヴァーシュのこの計画を封じ、二度と政治的危機を引き起こさぬようにすることにある。例によって君もしくは君のメンバーが捕らえら れ、あるいは殺されても当局は一切関知しないからそのつもりで。なおこの録音は5秒以内に消滅する。 成功を祈る。
【スタッフ】
脚本: ローレンス・ヒースLaurence Heath
製作: ジョセフ・ガントマンJoseph Gantman
監督: ルイス・アレンLewis Allen
【ゲスト出演】
ヨセフ・ヴァーシュ:キャロル・オコナー(早野寿朗)Carroll O'Connor as Josef Varsh
アントン・クドノフ:デヴィッド・オパトシュ(真木恭介)David Opatoshu as Deputy Premier Anton Kudnov
バスケイ:マイケル・ストロング(小林昭二)Michael Strong as Barsky
リサ・ゴーレン:ゲイル・コーベ(本山可久子)Gail Kobe as Lisa Goren
ツービン:ドン・キーファ Don Keefer as Zubin
プラチノフ:イワン・トリーザウルト Ivan Triesault as Platinov
モイセフ:ポール・ルカサー Paul Lukather as Moisev
【場所】@指令(媒体):建築設計家の部屋にある机の引き出しの中からレコードを取り出す
A舞台:東ヨーロッパの国
【役割】ダン:ナザン・ベントン(フレデリックの友人で農業科学者として集団農場を視察)
ローラン:リサの家に忍び込み下見→ダンに変装→弁護士ウェブスター
ウイリー:ホテルのボーイ(ダンの尾行者を遮る)
【道具】@小型カメラ:ヴァーシュとリサの写真と手紙を写す
A荷台の上にマットを敷いたトラック:ローランがリサのアパートの窓から飛び降りる時使用
【削除】(09分40秒)リサが30分も待っているのに誰も現れないとバスケイに言う
(19分50秒)ダンとクドノフ副首相の会話の一部
【見所】(12分00秒)ヴァーシュがダンを集団農場視察は表向きでダムを狙っていると確信する
(20分40秒)ダンの部屋を家捜し、ヴァーシュは車の鍵とマイクロフィルムを押収する
(28分20秒)ローランが爆弾の出所について証人に質問し、国内でも入手できると示唆する
(29分50秒)クドノフ副首相がヴァーシュにダンは自分と一緒にいたと告げる
(32分00秒)ヴァーシュがクドノフとダンが結託していると食って掛かる
(36分40秒)ヴァーシュの部下が彫刻の影を副首相と思って狙撃する 
(39分10秒)ローランによってリサとヴァーシュが親密な関係だと法廷で暴露される
(44分50秒)証人席でローランの仮面を剥がしてクドノフ副首相が現れる
【疑問点】@リサのところへ行ったローラン扮するダンの声はローランの声であった。どうして、声をダンの声にしなかったのか?
【粗筋】作戦として、ヴァーシュにとって目の上のタンコブである副総理アントン・クドノフを利用する。まず、前日にリサとホテルの喫茶室で会う約束をし、それ をすっぽかして留守中に、ローランがリサ宅に忍び込んで写真と手紙をカメラに収める。そして、ダンは午後9時にクドノフ副首相宅へ訪問してアリバイをつく る。一方、同時刻にダンに変装したローランがリサのアパートを訪れ、ヴァーシュが到着した時は逃げた後である。ローランが残した鞄から車の鍵が見つか り、爆薬の積んである車の鍵と判明し、また、ダンの部屋からはマイクロフィルムが発見され、ダンがスパイ容疑で逮捕されてしまう。そして、裁判が始まり、 検察側はダンがダムの水力発電を破壊し、マイクロフィルムには爆破箇所が示されていると主張する。検察側の証人も皆嘘をついているようには見えず、ダ ンに不利になる証言ばかりである。これをテレビ中継で見たクドノフ副首相は、ヴァーシュに裁判を取り下げないと、今までの悪事をすべて全世界にブチまけ るぞと迫り、焦ったヴァーシュはダンを呼び付け、吐かせようとするがうまくいかない。そこで、ヴァーシュはクドノフ副首相を暗殺するように部下に指示する が、これも失敗に終わる。一方、裁判では弁護人の反撃が始まり、証人リサと検察官ヴァーシュが親密であることが暴露される。これに対して、ヴァーシュは 開き直って、リサを利用して敵側スパイの夫を捕らえたのだと証言する。騙されたと知ってリサは、大粒の涙を浮かべ、ヴァーシュとの仲は決定的な破局を迎 える。そこで、弁護士であるローランは30分で最後の証人を連れてくると休廷を申し入れる。再開後、ローランが証人席に座るのを判事が咎めると、入口に もう一人のローランが立っており、法廷内にどよめきが起こる。証人席にいるローランがマスクを剥がし、クドノフ副首相の顔が現れる。ヴァーシュに殺されか けたとクドノフ副首相は今までのいきさつを証言する。裁判官は殺人未遂容疑でヴァーシュを逮捕すると宣告し、晴れてダンは無罪となりローランと堅い握手 をするのだった。
【解説】一般的に事件を捜査する刑事などは、容疑者に犯行時刻にどこにいて何をしていたかを確認する。いわゆるアリバイを調べるのである。これは、一人 の人物が複数の場所に同時刻に存在するはずがないという前提に立つものだ。今回のIMFの取った作戦は、こういったアリバイ捜査を根本的に覆すもので ある。ダンが二人いて、同一時刻に一人のダンはクドノフ副首相宅におり、もう一人のダンはリサのアパートにいる。実際にはありえないことをIMFはやって のける。もちろん、ローランの変装術の賜物である。
 ローラン扮するダンは、爆薬を車に隠してダムを破壊する目的で入国したように見せかけ、これによりダンが逮捕される。そして、裁判の様子をテレビで見 たクドノフ副首相は、犯行時刻にダンが自分の家にいたことを思い出し、ヴァーシュにプレッシャーをかける。ヴァーシュはクドノフ副首相を煙たく思い、暗殺し ようとするが果たせない。そして、法廷でクドノフ副首相はローランのマスクを被り証言台に立つのだ。裁判官は弁護士がどうして証人席にいるかを咎めると、 クドノフはローランのマスクを取って素顔を現し、法廷内はどよめくという筋書きである。
 法廷ドラマの最後で、このシーンをまねたものがかなりあるが、恐らく「スパイ大作戦」がその走りであろう。ヴァーシュを再起不能にする方法は他にいくらで もあるだろうが、たまには合法的に裁判で決着させるというフィナーレも悪くはない。


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