スパイドラマ倶楽部・別館-スパイ大作戦専門館



エピソードガイド1



24 列車偽装作戦 The Train
【目的】民主主義と国民の自由を守るために、その国の副首相に次期政権を渡さぬこと
【指令】おはよう、ブリッグス君。写真の人物はフェレンク・ラルヤといって、民主主義と国民の自由のために長年闘ってきたスバデアの総理大臣である。現在 ラルヤ首相は病あつく、余命いくばくもないが、彼亡き後は副総理のパヴェルがその地位と政策を継ぐものとされている。もしこの副総理のパヴェルが権力を 握るならば彼は独裁政権を確立し民主主義勢力を粛清・追放する腹であり、それを知らぬのはラルヤ首相だけである。
 そこで君の使命だが、このパヴェルに次期政権を渡さぬことにある。例によって君たちのメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても当局は一切関知しない からそのつもりで。なおこのテープは10秒以内に自動的に消滅する。 成功を祈る。
【スタッフ】
脚本: ウィリアム・リード・ウッドフィールド&アラン・バルターWilliam Read Woodfield and Allan Balter
製作: ジョセフ・ガントマンJoseph Gantman
監督: ラルフ・セネンスキーRalph Senensky
【ゲスト出演】
パヴェル副総理:ウィリアム・ウィンドム(木村幌)William Windom as Deputy Premier Milos Pavel
フェレンク・ラルヤ総理大臣:ライス・ウィリアムズ(河村弘二)Rhys Williams as Prime Minister Ferenc Larya
ドクター・セルビイ:ウィリアム・シャラート(加藤和夫)William Schallert as Dr. Harrison Selby
将軍:ノア・キーン(西田昭市)Noah Keen as Androv
オリヴァー・ドノヴァン:リチャード・ブル(寺島幹夫)Richard Bull as Oliver Donovan
ハス医師:ブース・コールマン Booth Colman as Dr. Huss
【場所】@指令(媒体):ペニーアーケードにあるセルフ写真機のボックスの下にある棚からオープンテープレコーダーを取り出す
A舞台:スバデア(ヨーロッパ)
【役割】ダン:指令の受領
ローラン:警備隊長
シナモン:看護婦(双房弁の異常をレントゲン写真で細工)
バーニー:機関車操縦→音響担当
ウイリー:ポイント切り替え→車庫の外で見張り
セルビイ医師:心臓外科の権威で首相の心臓手術を担当
【道具】@双房弁異常の心臓の鼓動を録音した装置
A催眠スプレー
B油圧式装置一式:列車の車両に取り付け実際に動いているようにみせかける
C映像フィルムと音響;列車の窓から見える実際の風景と音を記録してあり、それを再生する
【削除】(08分50秒)首相が外出に耐えられるかシナモンがセルビイ医師に尋ねる
(27分10秒)シナモンとセルビイ医師が首相と会話し、副首相と酒を飲むと言う
【見所】(07分40秒)反対分子を全部捕らえ殺す日が楽しみとパヴェル副首相が将軍に言う
(10分10秒)IMFが車庫内で準備しているところを警備兵に見つかる
(19分40秒)首相の車両が最後尾でなく中間の車両と判明し、お終いだとバーニーが言う
(30分00秒)列車が止まったことを不審に思う将軍は、外に出ようとするがローランが制止する
(32分50秒)音響装置から煙が出て、新しい真空管をバーニーがうまく取り付ける
(36分50秒)将軍が前の車両がなくなっているのに気がつきローランに問いただす
(42分40秒)脱線事故の後病院にいることに気づく将軍は右手に怪我をし、首相の死亡を知る
(47分00秒)病室の壁が取り払われ、首相にすべてを聞かれてしまい、驚く副首相と将軍
【疑問点】@白昼堂々と首相車両が車庫に入る時に誰にも見られなかったのか?
A映写機を使って写した映像は普通誰もが変だと気がつくはず。
【粗筋】心臓手術のためベルンに行くことになる首相の移動は列車と決定する。いつもは最後尾の車両が首相車両だが、今回は真ん中の車両が選ばれ、こ れだとIMFの作戦が実行できないので、警備隊長のローランは強引に最後尾を首相車両にしてしまう。そして、将軍から真ん中の車両だと咎められると、途 中駅でこの後ろに列車を連結するとうまく逃れるのだ。首相車両を残して列車は出発し、首相車両はバーニーが機関車で車庫に入れる。そして、列車に油 圧式装置を取りつけ、映像フィルムと音響効果のテープを流し、列車による疑似旅行がスタートする。他の車両の様子が気になる将軍は前の車両に行こうと するが、切り離されていることに驚いて、問いただすと、ローランがうまく言い訳をして切り抜ける。最後に疑似旅行は列車の脱線転覆という結末を迎え、催 眠スプレーで将軍と副首相を眠らせる。病院で目が覚めた将軍は副首相に首相が亡くなったことを報告する。それを聞いてすっかり有頂天になってしまうパ ヴェルは首相の宣誓式を将軍と二人で行い、首相の告別式は形だけでいい、民主主義も老いぼれとともに消えたことを叩き込む。刑務所の反対分子も一掃 するとパヴェルの口から出るのを首相は信じられないという面持ちで聞くのである。その時、病室のセットが取り外され、パヴェルと将軍は驚くのである。そし て、一掃されるのはおまえたちの方だと首相に言われがっくりする二人。シナモンがこうでもしないと信じてもらえないと思いましてと詫びると、首相は命より も尊い民主主義の火種が消えずに済んだと答え、後は選ぶだけだ、真の後継者をと自分の最後の使命を心に銘ずるのであった。
【解説】このエピソードでは偽似旅行の概念が本シリーズに初めて導入される。心臓病を治療するために首相が列車に乗って移動するというものだが、悪事 を企む副首相と将軍も同乗する。IMFは彼らを最後部の車両に乗せて切り離し、倉庫の中に隠してしまう。一国の首相の乗った列車の異常事態を誰も目撃 しないというのもありえないと思うが、それはさておき、倉庫内で列車に油圧装置みたいなものを取りつけて、列車の走る音声や周りの風景を撮影した映像 をスクリーンに映して、偽似旅行はスタートする。
 列車のスピードはぐんぐんとはね上がり、偽似旅行の終焉は脱線転覆事故という結末を迎える。副首相と将軍が目を覚ますと、そこは病院で首相が死んだ ことが判明する。二人で副首相の首相宣誓式を勝手に行い、民主主義の時代の終焉と独裁国家の誕生を示唆する話を始める。すると、壁が取り払われ、副 首相と将軍の前に首相の姿が現れて二人は絶句するのであった。
 偽似旅行の概念は、視聴者を視覚的に楽しませ、また、ショーの中では劇的な効果が現れるため、この後乗り物をいろいろと変えて採用されることにな る。第3シーズンの「スパイ交換作戦」においては、敵側スパイを木箱に入れトラックに載せて、国境を越えて自国の大佐の部屋まで連れてくると見せかける シーンでも使用される。また、第4シーズンの「海の底で口を割れ」では、ナチスの隠し財産の口座番号を知る男が、25年間の服役の中で1度も白状しなか ったが、IMFによる潜水艦の偽似旅行の最中に、その口座番号を自分の自尊心から喋ってしまうシーンでもこのトリックは使用される。
 時間のトリックを使用した「大量殺戮者」とともに、「列車偽装作戦」は内容においても第1シーズンにおいて双璧をなすものとなり、この年のシリーズを代表 する作品としてエミー賞の候補となり、見事その栄誉を勝ち取ったのである。しかしながら、ダンの役割については、「偽造フィルムを暴露せよ」で一度も顔を 出さなかったが、このエピソードでも指令の受領のみの出演で、今後、第1シーズンの最終話まで必要最低限度のシーンしか登場しなくなる。そして、お別 れの挨拶も言わないで第1シーズン限りで去ってしまうことになり、スティーヴン・ヒルのファンにとっては寂しい限りである。
 それにしても、列車の周囲を映す映像だが、誰が見てもお世辞にも本物には見えず、それが映像スクリーンであるのは明白であるが、それを出演者が本 物と思って演じているのは、皮肉にも滑稽である。現代の映写技術では、全く本物同様に見せることが可能になっているかもしれない。偽似旅行のアイデア は素晴らしいものの、それをうまく表現できなかったのは、当時としては限界だったのかもしれない。


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