スパイドラマ倶楽部・別館-スパイ大作戦専門館



エピソードガイド2



33 対奴隷作戦(前編) The Slave (Part 1)
34 対奴隷作戦(後編) The Slave (Part 2)
【目的】奴隷売買をやめさせるとともに、それに関わる国王と奴隷商人の勢力を一掃すること
【指令】おはよう、フェルプス君。 第二次大戦終了以来国連によって近東諸国の奴隷市場は廃止されてきたが、ここに例外が一つ。これは、エル・カバール というペルシャ湾に面した小国で、その支配者ボルカは絶対専制君主であり、依然として毎年何千という奴隷を売買している。ボルカの奴隷供給源は、主に このデ・グルートであり、隣接諸国の男女を誘拐しては奴隷にするため、近東の国際情勢はとみに緊張の度を加えるに至っている。
 そこで君の使命だが、この奴隷売買をやめさせるとともに、エル・カバールからデ・グルートとボルカの勢力を一掃することにある。例によって君もしくは君の メンバーが捕らえられ、あるいは殺されても当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、この録音は自動的に消滅する。 成功を祈る。
【スタッフ】
脚本: ウィリアム・リード・ウッドフィールド&アラン・バルターWilliam Read Woodfield and Allan Balter
製作: ジョセフ・ガントマンJoseph Gantman
監督: リー・H・カッツィンLee H. Katzin
【ゲスト出演】
ボルカ:ジョセフ・ラスキン(北山年男)Joseph Ruskin as King Ibn Borca
ジャーラ:パーシー・ロドリゲス(相模武)Percy Rodriguez as Jara
デ・グルート:ウォーレン・スティーヴンス(森山周一郎)Warren Stevens as Karl de Groot
アバーラ:アントワネット・バウワー(二階堂有希子)Antoinette Bower as Amara
アキム・ハドラムト:スティーヴ・フランケン(伊藤克)Steve Franken as Akim Hadramut
ファサール王子:デヴィッド・モーロ David Mauro as Prince Fasar
ムーシャ:シド・ヘイグ Sid Haig as Musha
カディー:ピーター・ローレ・ジュニア Peter Lorre, Jr. as Kadi
シャー:マイケル・St・クレア Michael St. Clair as Shah
【場所】@指令(媒体):公園の赤い電話の木箱の中に入っているオープンテープレコーダーを取り出す
A舞台:エル・カバール(ペルシャ湾に面している小国)
【役割】ジム:ロジャース(女奴隷を紹介)
ローラン:国際刑事警察機構の警部→物乞い→コウモリのセット→ボルカに変装
シナモン:女奴隷
バーニー:奴隷→警備兵→アバーラを誘拐→車椅子に乗った老人→牢屋に食事を配る看守
ウイリー:ガウン売り→アバーラを誘拐→ジムを救助→現地警察官(アバーラの指輪を届ける)→車椅子に乗った老人を手で押す→牢屋に食事を配る看守
アキム:国際司法委員(ファサールの大学時代の同級生)
【道具】@冷凍コウモリ:数は2ダース
A台車(座):2倍の大きさになり、車の下に潜る時に使用
B布製の吊り道具:車の下部に取り付けてバーニーがしがみつく
Cカメラ:牢屋の様子を撮影
D脱獄の小道具セット:ベルト、鍵、針金等 (バーニーが使用)
E牢屋のセット:写真をもとに本物と同じ造り (アバーラを監禁)
F拷問にかけられた女性の声の録音テープ:アバーラに聞かせる
G鎮静剤の注射
H料理を運ぶワゴン:中にアバーラが入っておりシナモンとすりかわる
【削除】(前21分50秒)デ・グルートがボルカの後をつけるとジャーラに言って外へ出る
【見所】(前14分50秒)奴隷として6名が連れてこられ、その中にバーニーがいる
(25分40秒)デ・グルートがボルカにシナモンのことを話し、ジムを相場を知らない奴と言う
(27分50秒)奴隷が逃げたという報告を受け、逃げた奴隷は縛り首がルールと言うボルカ
(29分30秒)デ・グルートの車の下に隠れるバーニーはそのまま車にしがみつき移動する
(35分00秒)アバーラにもし奴隷がいればそれを廃止するのが自分の仕事と言うファサール
(40分00秒)ジムがジャーラの店で殴り倒され、パスポートや免許証を見られ身元確認される
(43分40秒)冷凍コウモリが溶けてアバーラ達に襲いかかり、その隙にウイリーがアバーラを誘拐する
(48分00秒)アバーラがIMFの造った牢屋から助けて!と必死になって訴える
(後06分30秒)ここまでは前編の粗筋、ここから後編スタート
(10分30秒)シナモンが車のキーを取って車を止めるが、ライフルをジムに向けるデ・グルート
(17分20秒)ジムとシナモンがジャーラの店に現れると、驚くジャーラにデ・グルートは死んだと言う
(20分30秒)ムーシャはジムを背後から銃を突きつけるが、ジャーラがムーシャを射殺する
(25分40秒)ローランはファサールにアバーラが奴隷市で売られると報告する
(29分40秒)ボルカは自分がこの町から出すなと言ったらどうなるとジムを脅迫する
(37分40秒)シナモンが25000ポンドで裏取引されることに、ジムはセリに出すようボルカを説得する
(42分40秒)牢屋にいるシナモンがワゴンの中にいるアバーラとすりかわる
(46分00秒)ファサールがアバーラを50000ポンドで競り落とし、弟の妻を売る兄に詰め寄る
(47分10秒)ファサールがボルカを射殺し、奴隷制度廃止を宣言する
【疑問点】@バーニーがカメラや小道具を持って牢屋に入るが、事前に身体検査はなかったのか?
A冷凍コウモリは密閉された筒の中に入れられているが、これでは息ができなくて死んでしまうのではないか?
【粗筋】エル・カバール国へは、ローランとアキムが国王ボルカと弟のファサールに挨拶をする。ローランはこの後物乞いをし、ウイリーはガウン売りとして町に 出る。ジムは奴隷のバイヤーであるデ・グルートに会うため酒場に寄る。上等な奴隷を売りたいとシナモンの写真を見せる。バーニーは奴隷として捕まり、牢 屋の中の写真を撮り、警備兵に扮して脱出し、デ・グルートの車の下に潜って、そのまましがみついてうまく逃げるのだ。ジムはデ・グルートと商談を進める が、5000ポンドが3000ポンドに値切られてしまい、さらに殴り倒され身分を確認されてしまう。ローランらは、冷凍コウモリをファサール邸に仕込み、コウモ リが溶けてアバーラとファサールに襲いかかり、混乱に紛れてウイリーがアバーラをさらう。アバーラを心配するファサールは、兄に頼んで軍隊を動かそうとす るが、ローランはそんなことをしたら、アバーラは戻ってこないと現地の警察に知り合いがいるから任せろと言うのである。IMFはアバーラを牢屋に入れ、助け てと叫ぶ声を聞いてバーニーが心を痛めるが、ジムはできるだけ慰めてくれとバーニーに指示をする。アバーラは"助けて!何かの間違いよ。出してちょうだ い。お願いだから。"と必死になって訴えるのである。
 ジムはシナモンを3000ポンドで渡すが、封筒を開けると1000ポンドしかないと言って、デ・グルートを車で追いかける。シナモンが車のキーを取り、車を止 めてしまうと、怒ったデ・グルートはジムにライフルを向けるが、その背後からウイリーが銃を突きつけ、デ・グルートを車に乗せて監禁する。そして、ジムはジ ャーラにデ・グルートは死んだと伝え、一緒に組もうと持ちかける。すると、背後からムーシャがジムに銃を突きつけ殺そうとするが、ジャーラがジムの腰につ いている拳銃を取ってムーシャを射殺する。ボルカに変装したローランは、牢屋にいるアバーラの目の前でこれはいい値段で売れると告げる。その後、アバー ラを鎮静剤で眠らせて、シナモンとそっくりの化粧を施すのだ。一方、シナモンはジムと一緒に奴隷市へ連れていかれる。ローランとアキムはファサールに奴 隷市のことやボルカのこと、さらに、アバーラが奴隷市で売られることすべてを打ち明ける。最初は信じなかったファサールも次第に怒りが込み上げてきて、 奴隷市に顔を出すことになる。ジムはボルカと一緒に組むことを提案し、利益の山分けを要求すると、ボルカはデ・グルートには25%しかやっていなかったと 拒絶し、自分がこの町から出すなと言ったらどうなるかと脅しにかかる。反対にジムは奴隷で潤っている国で私がいなかったらどうなるかと切り返し、二人は 手を結ぶことになる。セリ市の前に有力バイヤーのお披露目で、シナモンをボルカが25000ポンドで売ろうとするが、ジムはセリ市に出すように強く求めボル カも納得する。牢屋には、バーニーとウイリーが食事を配るふりをして、ワゴンの中に隠れているアバーラとシナモンをすり替える。そして目玉商品としてアバ ーラがセリにかけられ、どんどん値がつりあがっていき、ファサールが50000ポンドでセリ落し、弟の妻を売るのかとボルカに食ってかかる。驚くボルカに対し て、アバーラも牢屋でローランが言ったことをぶちまける。そして、ファサールはボルカを射殺し、奴隷制度廃止を宣言するのだ。奴隷制度廃止のためなら、ま た同じことをしてもいいわと言うアバーラに、あれしか方法がなかったと詫びるジムであった。
【解説】現代社会において、個人の人権問題については先進国において強烈に主張されるため、奴隷制度のある地域はないと思うが、「スパイ大作戦」が製 作された頃には奴隷制度か、あるいは、これに近い制度がまだあったような記憶がある。恐らく、本エピソードは奴隷制度の奴隷の悲惨さや酷さから奴隷制 度を痛烈に批判するために作られたのだろう。
 IMFのメンバーではバーニーとシナモンが奴隷として潜入する。バーニーが肉体的労働を目的とする奴隷なのに対して、シナモンは性的な目的を持つ奴隷 ということで、奴隷には2種類あるということがわかる。バーニーは自分が入れられた独房の写真を撮った後、看守に変装して、奴隷商人デ・クルートの車の 下部にしがみつき脱出する。その時、気がついたのだが、ローランが物乞いをしていたり、ウイリーがガウン売りに扮していたりするのは見ていて面白いもの の、作戦上何の意味があるのか疑問だが、恐らく、バーニーが脱出に失敗した時に何かオプションを用意していたのかもしれない。
 数々のトリックや小道具が登場するが、その中でも秀逸なのが24匹いる冷凍コウモリである。真空管の中に冷凍コウモリが入れてあり、それを暖炉の上 からファサールとアバーラの就寝中の部屋に垂らして、暖炉の熱でコウモリが溶けて、寝室内を飛び回ってその隙にウイリーがアバーラを誘拐する道具とし て使われる。アバーラ役のアントワネット・バウアーの顔に向かってコウモリが飛ぶ姿がリアルで迫力あるシーンになっている。しかし、誘拐のために何もコウ モリを使う必然性はなかったのではないだろうか。余談であるが、日本版では「アバーラ」という名前になっているが、オリジナル版では「アマーラ Amara」に なっている。
 アバーラを拉致したIMFはバーニーの撮った写真を参考にして作った独房の中に閉じ込める。アバーラが"助けて!何かの間違いよ。出してちょうだい、お 願いだから"と叫ぶ声が響き、視聴者の誰もがアバーラに同情するシーンである。アバーラが国王の弟の嫁という立場で何の罪もなく、このような仕打ちを受 ける道理はないはずである。IMFの取った作戦でここまで非難されることも珍しい。バーニーも心を痛めてジムに目で訴えるが、ジムはただ慰めてくれと指示 するだけである。
 ジムは奴隷商人デ・クルートにシナモンを奴隷として紹介し、これが国王の耳にも入る。そして、デ・クルートを排して国王と直接取引を持ちかけて成功す る。ただ、デ・クルートを排した後、ジムは店主にデ・クルートは死んだと告げるが、本当に殺したかどうかその後デ・クルートが登場しないので不明である。
 奴隷市場の現場では、国王がシナモンを得意客に裏取引をしようと試みるが、ジムは言葉巧妙に自由競争での落札をするように主張する。そして、独房で シナモンとアバーラをすり替え、弟ファサールの目の前でアバーラがセリにかけられるのだ。ファサールはアバーラを5万ドルでセリ落として、弟の妻を売るの かと言って、国王を射殺して奴隷制度廃止を宣言するのだった。最後に、アバーラが"奴隷制度廃止のためならまた同じことをしてもいいわ"と言うと、"あれ しか方法がなかった"とジムは詫びるが、本当にそうなのか疑問は残る。
 もし、アパートの作戦会議の時点で、ファサールとアバーラを招いて事前承諾を得ていたらどのような展開になったのか想像すると、最後にファサールが自 分の兄である国王を射殺することができたか疑問符がつく。ジムの取った作戦では、ファサールが自分の妻を奴隷にされた悔しさの勢いで衝動的に射殺す ることができたのではないだろうか。やはり、事前に情報を与えられていたら、ファサールに考える時間を与えてしまい、いざ肉親を殺せという場面になると躊 躇してしまうものだろう。


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