スパイドラマ倶楽部・別館-スパイ大作戦専門館



エピソードガイド2



41 イメージをダブらせろ Echo of Yesterday
【目的】ナチス復興を企てる大佐とパトロンの暗躍を封じること
【指令】おはよう、フェルプス君。 写真の人物はマーカス・ヴォン・フランク大佐といって、最近復興した新ナチのリーダーである。そしてヨーロッパ随一の軍需 工場を持つオットー・ケルマンは、その膨大な工業力を挙げてヴォン・フランク大佐の支配下に委ねようとしており、これが実現すればその強大な経済力をバ ックに第二のヒットラー、ヴォン・フランクが誕生することは火を見るより明らかである。
 そこで君の使命だが、このオットー・ケルマンとヴォン・フランク大佐の暗躍を封じることにある。例によって君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺 されても当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。 成功を祈る。
【スタッフ】
脚本: マン・ルービンMann Rubin
製作: ジョセフ・ガントマンJoseph Gantman
監督: レオナルド・J・ホーンLeonard J. Horn
【ゲスト出演】
オットー・ケルマン:ウィルフリッド・ハイド=ホワイト(久米明)Wilfrid Hyde-White as Otto Kelmann
ヴォン・フランク大佐:ハンス・ガジェガスト(穂積隆信)Hans Gudegast as Colonel Marcus von Frank
カール:リチャード・モリソン(椎原邦彦)Richard Morrison as Karl
ハインツ:グレゴリー・ムラヴィ(林昭夫)Gregory Mullavy as Heinz
【場所】@指令(媒体):路上に駐車してある別の車のダッシュボードにあるテープカートリッジを聞く
A舞台:ヨーロッパ
【役割】ジム:リチャード・ダンヒル少佐
ローラン: 家具の運搬→ヒトラーに変装
シナモン:フロライン・ティスター
ウイリー:家具の運搬→ヒトラーの部下
【道具】@眠り薬と目が覚める薬
A家具一式:1932年当時のケルマン邸にあったもの
【削除】(22分30秒)夕食を楽しむケルマンとシナモンはナチについて語る
(25分50秒)ヒトラーのフィルムを見て研究するローランとウイリー
【見所】(14分50秒)ジムは腕に負傷を負うが、一滴もブランデーをこぼさずにフランク大佐から褒められる
(17分10秒)スカートを破ってしまったシナモンは、知らない人に送ってもらうのは悪いとケルマンに言う
(20分00秒)シナモン宅から帰ろうとするところへ電話が入り、別れ話に気になるケルマン
(28分40秒)シナモンが夜中にケルマンの部屋にいるところをカールに見つかる
(32分40秒)シナモンがフランクとケルマンの一緒の写真を撮るとフランクは怒り出す
(36分20秒)シナモンがアパートを1週間前に借りたことを知りフランクは怒り出す
(42分20秒)ヒトラーが現れ、ケルマンの妻が売国奴としてケルマンの前で射殺される
(47分10秒)ケルマンによってフランクが射殺され、警察を呼びますとがっくりとくる
【疑問点】@ヒトラーがケルマンの妻を殺害した時は、ケルマンはその怒りを我慢するだけだったが、フランクがシナモンを殺した時は、フランクを射殺してしま う。これはフランクがヒトラーと比べると役不足ということか?
【粗筋】ジムはナチスのアメリカリーダーの少佐に扮し、アメリカを纏めるのはフランク大佐の信任が必要と言うのに対して、フランクはジムに勇気があるか試 したいと言ってフェンシングの勝負をすることになる。勇気のある者は後退しないものだと言い、両足の後ろにブランデーをグラスに入れて試合が開始される。 一方、シナモンは公園で写真を撮っていて初老の財界人ケルマンと話をすることになり、はずみにスカートが切れて、ケルマンに自宅まで送ってもらう。二人 はカメラのことで話がはずみ、ケルマンが帰ろうとするところへ電話が入り、エリックからの別れ話を聞いてしまったケルマンは、自宅に来るように促し、シナ モンは夕食を取って泊まることになる。夜中にケルマンの書斎にシナモンは侵入し、部屋の写真を撮るが、カールに見つかってしまう。シナモンはうまく弁解 し、ケルマンもこのことはなかったことにしようと許すのである。翌日、フランクとジムがケルマン邸を訪れ、フランクはシナモンに写真を撮られたことに怒る。そ して、ジムはシナモンが大佐の敵のような気がすると暗示をかける。大佐はシナモンのことを調べさせると、アパートを1週間前に借りており、1年も住んでい ると嘘をついていたことがわかり激怒する。シナモンはコーヒーに睡眠薬を盛って、ケルマンを眠らせ、その間、家具を1932年当時のケルマン邸にあったも のとそっくりに入れ替えてしまう。そして、夢うつつの中で、ローラン扮したヒトラーがケルマンの妻を射殺するシーンを再現してみせるのだ。その後、IMFは眠 りから覚めたケルマンにフランクがシナモンをスパイと認定して射殺してしまうという同じようなシーンを演出して見せるのである。すると、今度は怒ったケルマ ンがフランクを射殺してしまうのである。ケルマンは警察に連絡し、がっくりとうな垂れるのであった。
【解説】このエピソードもナチスをテーマにしており、何と、ローラン扮するヒトラー総統が登場してしまう。ヒトラーの生の映像を交え、衣装やブーツまでも細部 にわたってリアルに再現され、ストーリー全体に当時の雰囲気をうまく醸し出している。
 シナモンが重要な役割を果たし、軍需産業のオーナーのケルマンに巧みに近づく。カメラを持って写真に夢中になるという、ケルマンの亡き妻の若い頃と同 じような行動を取るのだ。そして、スカートを故意に切って車で自宅まで送ってもらい、怪しい男からの電話で困って見せ、ケルマンの自宅に泊まるところまで とんとん拍子にこぎつける。ここまでくると、ケルマンはシナモンの中に亡き妻の面影を見てしまうのだ。映像的にもシナモンの白黒カットを随所で挿入して、 そのシーンをうまく演出している。
 IMFがこのケルマンに取った作戦は、シナモンがコーヒーに睡眠薬を盛ってケルマンを眠らせ、その間に装飾品や家具一式を1932年当時のものにすり替 えてしまうのだ。よくもまあ、そんなに古いものをかき集めてきたものだと感心するくらいに大胆な作戦である。そして、夢うつつのケルマンの前で、ローラン扮 するヒトラーがシナモン扮するケルマンの妻を売国奴として射殺するシーンを演出するのだ。その後、またケルマンが深い眠りに入ると、IMFは家具一式元に 戻して平穏を装うのである。
 一方、ナチス再興を企むフランク大佐は、シナモンのことを気に入らず、大佐の信用を得たジムはそれに拍車をかけるような情報を流す。また、シナモンが1 年住んでいると言ったアパートには1週間しかいないという嘘がわかり激怒する。
 目を覚ましたケルマンの前に現れたのは、フランク大佐であり、シナモンをスパイと認定して射殺してしまうのである。すると、これに怒ったケルマンはフラン ク大佐を銃殺してしまい、警察に連絡すると言って肩をがっくりと落とすのである。ヒトラーが自分の妻を殺した時は、何もできずにそれに従うことしかできなか ったケルマンだが、シナモンが殺された時には、相手を射殺するに至った心境の変化は謎のままである。恐らく、何十年もの間、妻が殺されたことに対して 何もできなかった自分を後悔し続けていたということなのかもしれない。
 このシリーズでは数々の悪人が登場し、その悪質さや辛辣さには目を覆いたくなる人物がほとんどであるが、本エピソードで登場するケルマンは、その中 でも視聴者の共感や同情を得てしまう数少ない悪人のうちの一人であろう。最後は、IMFの罠により殺人者に仕立てられてしまった哀れな老人として描かれ ている。


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