スパイドラマ倶楽部・別館-スパイ大作戦専門館



エピソードガイド3



56 二重スパイをでっちあげろ! The Diplomat
【目的】軍事機密が敵に知れ、このままだと敵の先制攻撃を受けてしまうが、そのような事態を未然に防ぐこと
【指令】おはよう、フェルプス君。 一昨日、アメリカ合衆国のミサイルコントロールセンター四ヶ所の所在を示す機密書類が盗まれ、それに関係した敵国の駐 米諜報官バレット少佐たちは逮捕されたが、そのときはすでに遅く、書類はこの男、ワシントンにあるその国の大使館付武官ヤトコフの手に渡った後であっ た。有力な情報を入手した時の常として、それが本物であることを裏書きする確証が必要であり、ヤトコフはその仕事を部下のトップスパイ、ロジャー・トランド に命じたが、このままにしておけばやがてわが国は敵のミサイル先制攻撃の前に裸同然とならざるをえない。
 そこで君の使命だが、そのような事態を未然に防ぐことにある。例によって君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても当局は一切関知しな いからそのつもりで。なお、この録音テープは自動的に消滅する。 成功を祈る。
【スタッフ】
脚本: ジェリー・ルドウィグJerry Ludwig
製作: ウィリアム・リード・ウッドフィールド&アラン・バルターWilliam Read Woodfield and Allan Balter
監督: ドン・リチャードソンDon Richardson
【ゲスト出演】
ロジャー・トランド:フェルナンド・ラマス(川久保潔)Fernando Lamas as Roger Toland
ヤトコフ大佐:アルフレッド・ライダー(池田忠夫)Alfred Ryder as Colonel Valentin Yetkoff
スーザン・ブキャナン:リー・グラント(里見京子)Lee Grant as Susan Buchanan
エヴェレット・ブキャナン:ドン・ランドルフ(矢田稔)Don Randolph as Everett Buchanan
ドクター・ウォルターズ:ラス・コンウェイ(吉沢久嘉)Russ Conway as Dr. David Walters
グリゴール:シド・ヘイグ Sid Haig as Grigor
ニコライ:ハリー・バッシュ Harry Basch as Nicolai
クーリエ:アレン・ブライウァイス Allen Bleiweiss as Courier
【場所】@指令(媒体):小川が流れている脇にある赤い箱の中に入っているオープンテープレコーダーを取り出す
A舞台:アメリカ国内
【役割】ジム:電話会社社員(バレット少佐の部下)→アメリカのスパイ
ローラン:カメラマン(ブキャナン夫人をゆする)
バーニー:白バイ警官→自動車修理工
ウイリー:トラックの運転手→自動車修理工
ブキャナン:大統領付の役人
ブキャナン夫人:ブキャナン氏の夫人(秘密の電話帳を見せる)
ウォルターズ医師:薬を飲んだブキャナン夫人の救助
【道具】@薬品:大使館車のガソリンタンクに入れると脱穀機のような音がする
A車の改造:バックシートの裏にバーニーが潜む
B催眠ガスとマスク:車内で使用し、皆を眠らせた後に鞄の中の書類をすり替える
C三脚の仕掛け:ローランが躓いて、腹を貫通したように見せる (銃撃をさせない効果)
D隠しマイク:ブキャナン宅に設置
【削除】(09分00秒)パーティ会場でブキャナンは妻を残して出かけてしまう
(20分50秒)トランドに恥ずかしいところを見せてしまったと涙するブキャナン夫人
(35分40秒)トランドがブキャナン夫人に10000ドルでネガを取り戻したと言う
【見所】(07分40秒)ウイリーが交通違反で捕まり、大使館車に薬を入れる
(14分30秒)ヤトコフ大佐の部屋を覗くジムはグリゴールに発見されてしまう
(19分50秒)ブキャナン宅の金庫の中に赤い電話帳を見るトランド
(27分00秒)トランドは10000ドルをローランに見せ、ネガとプリントを要求する
(30分20秒)トランドはローランを射殺しようとするが、勝手にころんで死んだふりをするローラン
(33分00秒)ファイルの透かしが偽物で、大使館車の細工からジムはアメリカのスパイと判明する
(36分50秒)ブキャナン夫人が金庫を開け、トランドが赤い電話帳を取ると態度が豹変する
(43分40秒)トランドが外に出るのを確認後、IMFはいっせいにブキャナン夫人救助に向かう
(46分30秒)トランドにジムからの情報を見せる大佐だが、トランドの情報と全く同じ
【疑問点】@バレット少佐、トランド、ジムと三人の情報が全く同じということで、ヤトコフ大佐はアメリカのスパイのジムが裏を読んでいることに気がつかなかっ たのか?
【粗筋】四つのミサイルコントロールセンター(デンバー、アトランタ、ポートランド、デモイ)の所在の本物の情報が敵側に渡ってしまい、その情報が偽物だと思 わせるようにしなければならないというのが今回の使命である。敵の大使館に電話の故障ということで、ジムが電話修理会社社員として乗りこむ。ジムはヤ トコフ大佐の部屋を覗いているところをグリゴールに見つかり、情報を盗んだバレット少佐の部下と名乗り、万一の時に大佐に会うよう指示されたと言うので ある。本国に身分照会をかけると大佐に言われ、ジムはひとまず帰される。一方、パーティ会場では、ブキャナン夫人がロジャー・トランドとの会話をはずませ る。その後、ブキャナン夫人と仲良くなったトランドはブキャナン宅に上がり、ローランが夫人を脅している現場を見て、金庫の中に赤い電話帳を見つけるの だ。その中には、ミサイルコントロールセンターの電話番号が入っているとトランドは睨む。バーニーは大使館車の中に潜み、催眠ガスで同乗者全員を眠ら せ、鞄の書類をすり替えてジムのファイルを忍ばせる。しかし、ファイルの透かしが偽物で、車の工作もばれ、ジムがアメリカのスパイだとヤトコフ大佐に見破 られてしまう。一方、ローランを殺し、ブキャナン夫人にネガを渡すトランドは金庫を開けさせ、赤い電話帳を取り上げると態度が豹変し、ソウマジン15ミリグラ ムをブキャナン夫人に飲ませて殺そうとするのだ。ウォルターズ医師がタイムリミットは20分と言い、ストップウォッチとの睨めっことなる。無事ブキャナン夫人 を救助した後、ジムはトランドと全く同じ情報を持ってヤトコフ大佐に会いにいくのだ。アメリカのスパイが同じ情報を持ってきたということは、最初から偽物の 情報を渡され、それがあたかも本物だと信じさせようというアメリカ側の謀略なのだとヤトコフ大佐は結論づけるのである。そして、大佐は同じ情報を持ってき たトランドを二重スパイの容疑で射殺してしまうのであった。
【解説】このエピソード全体に流れる論理的な展開はかなり複雑に描かれており、それを理解するのに頭を悩ませるくらいに難解である。ほとんどの視聴者 がどうしてこのような結末になるのかと理解し難いのではないだろうか。本当の情報が敵に盗まれてしまい、IMFはその情報を偽物であることを敵に確信さ せるのが今回の最大の目的である。
 この作品を理解するには、本物の情報が漏れてしまったことを知っているのはアメリカ側だけで、敵側は情報を盗むことに成功したが、その情報が本物か 偽物かはまだ断定しかねている状況であることを認識する必要がある。東西冷戦下では、敵に故意に偽物の情報を掴ませて混乱させる作戦がよく行われて いたということだ。そこで、敵もその情報の真偽を確認するためにトップスパイのトランドを派遣してきたのである。
 そこでIMFの取った作戦は、大統領の側近のブキャナン夫人をトランドに接近させ、彼女の部屋にある金庫の中に盗んだ情報の真偽の鍵が隠されていると 思わせる。ローランは二人の関係をフィルムにおさめてブキャナン夫人を脅迫するが、トランドに襲われて自分で転んで死んだように見せるシーンのトリックは 面白くできている。そして、ネガを奪ったトランドは、ブキャナン夫人に渡して金庫室を開けさせて赤い電話帳を掴むと態度が豹変し、夫人に薬を飲まして殺害 を謀ろうとするのだ。IMFは隠しマイクの音声から時計との睨めっこで、夫人のタイムリミットまで刻々と迫るが、なかなかトランドは立ち去らずに緊張感溢れ るシーンとして描かれている。「黒の壊滅命令」でも使われた手法である。
 ここで、敵のトップスパイが盗んだ情報は、先に盗まれた情報と全く同じもので、もし、ここでストーリーが終わっていたら、どんな結果になっていたかとする と、両者の情報が同じことで、先に盗まれた情報は本物と認定がされてしまう。そこで、さらにIMFの取った作戦で、鍵を握るのがジムの存在である。
 ジムは最初の情報を盗んでアメリカに現在捕まっている少佐の部下という触れ込みで、大使館付武官ヤトコフに接触する。その後、車のトリックや偽の身 分証のすり替えを見破り、ヤトコフはジムのことをアメリカのスパイと認定する。そして、ジムからも情報を入手するのである。その結果、少佐が最初に入手し た情報、トランドが入手した情報、アメリカのスパイであるジムの情報の三つが同じことから、偽物の情報と認定してしまうのである。つまり、最初から偽物の 情報を与え、それがあたかも本物であるかのように見せかけるアメリカの策謀であると結論づけたのである。さらに、ヤトコフはトランドを二重スパイとして射殺 してしまうのである。


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