スパイドラマ倶楽部・別館-スパイ大作戦専門館



エピソードガイド3



75 金庫へ追い込め! The Vault
【目的】大統領金庫室からお金を着服し、大統領失脚を謀る大蔵大臣の動きを封じること
【指令】おはよう、フェルプス君。 その人物は名前をミゲール・デ・ヴァロといって、コスタマテオの大統領である。最近彼は、総額4000万ドルにのぼる国家 工業化計画を発表、その資金源は大統領金庫からの支出によってまかなわれる予定であるが、この男、大蔵大臣フィリッペ・ペレダが秘かにその資金を持 ち出しスイスの銀行に預金してしまったのだ。大蔵大臣ペレダは、大統領金庫は大統領デ・ヴァロしか開けることができぬという世間一般の考えを利用し、大 統領に4000万ドル公金横領の罪を着せ、自分がその後釜に座って国を牛耳ろうという腹である。
 そこで君の使命だが、大蔵大臣ペレダのこの動きを封じることにある。例によって君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても当局は一切関 知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。 成功を祈る。
【スタッフ】
脚本: ジュディ・バーンズJudy Burns
原案: ジュディ・バーンズ&ジョン・キングスブリッジJudy Burns and John Kingsbridge
製作: スタンレイ・カリスStanley Kallis
監督: リチャード・ベネディクトRichard Benedict
【ゲスト出演】
フィリッペ・ペレダ大蔵大臣:ネヘミア・パーソフNehemiah Persoff as Phillipe Pereda
デ・ヴァロ大統領:ルドルフォ・アコスタRodolfo Acosta as Presidente Miguel De Varo
セキュリティーガード:レイ・マーテル Ray Martell as Security Guard
パウロ:タルド・ケニヨン Taldo Kenyon as Paulo
伍長:ニック・ベネディクト Nick Benedict as Corporal
オルテガ:ジェリー・リジオ Jerry Riggio as Ortega
【場所】@指令(媒体):駐車場の事務所の棚からオープンテープレコーダーを取り出す
A舞台:コスタマテオ(サントトマスの隣国)
【役割】ジム:ニコライ・バリデン(人民通商委員会)
ローラン:フリードリッヒ・ビンター(会計監査)→デ・ヴァロ大統領に変装
シナモン:イレナ・ゴルスカ(人民通商委員会)
バーニー:金庫破り
ウイリー:掃除夫→大統領車運転手
【道具】@円い円盤状の物体:主金庫をあけるための道具
Aヘッドライト
B聴診器型のダイヤル番号探知機
Cテープレコーダー:金庫の音を録音
Dスクリーン:奥にバーニーが隠れる
E赤いスイッチボタン:本物の赤いスイッチボタンの上に被せる
F大統領金庫の扉を閉めるリモコンスイッチ
【削除】(13分10秒)警備員に金庫室を案内されるローラン
【見所】(10分20秒)大統領をはめる計画を語るペレダ大蔵大臣とパウロ
(15分00秒)バーニーが金庫室に通じる狭い通路に侵入すると、すぐに警備兵が部屋に入る
(19分50秒)ペレダは大統領が明日失脚し、詳細につきジムとシナモンに説明する
(27分00秒)金庫室の警報機をバーニーが鳴らし、警備兵を殴り倒すローラン
(30分30秒)警備もタイムロックも無駄だったとペレダは嘆き、先程の話も白紙だとジムに言う
(33分10秒)シナモンがローランに色仕掛けで外に連れ出す様子をペレダは見守る
(40分20秒)ローラン扮する大統領が金庫室に入り、バーニーより録音テープを受け取る
(44分10秒)バーニーがリモコンのスイッチを入れると大統領金庫室にペレダが閉じ込められる
(47分30秒)本物の大統領が来て金庫を開けるとペレダが中におり、オルテガと共に逮捕される
【疑問点】@大統領金庫のダイヤルは音の組み合わせになっており、こういう金庫は実在するのだろうか?
【粗筋】ジムとシナモンは人民通商委員としてデ・ヴァロ大統領とペレダ大蔵大臣に会い、軍事基地を提供する代わりに資金を融資するという話を持ちかける が、大統領に断られる。ウイリーは大統領官邸へ掃除夫として入り、バーニーは掃除道具のワゴンに隠れて金庫室への侵入を試みる。そして、ウイリーが廊 下にワックスをかけている間、バーニーは金庫室に隣接している部屋より、バーナーでドアを焼き切り金庫室に通じる空間に忍び込み、主金庫を開けるの だ。ペレダはジムとシナモンを再度呼び、融資の話を検討していると告げると、シナモンよりそれなりの権限者じゃないと話ができないと拒否されてしまう。し かし、ペレダは明日大統領が実在しないアメリカの会社に行くことや、スイスの銀行に4000万ドルの預金が見つかることから失脚することを仄めかす。これ に対して、シナモンは軍事基地を借りる見返りに年間1億ドルの融資をすると切り出すと、2億ドルにしてくれとペレダは欲を出す。結局、シナモンの話術にペ レダは1億ドルで納得する。その最中、バーニーが金庫室の警報装置を鳴らし、ペレダはジムとシナモンにこの話はなかったことにしてくれと頼むのである。 ローランは頃合いを見計らって、大統領の声帯模写でペレダに電話を入れ、大統領が来るということで慌てるが、シナモンが4000万ドルを都合つけるからと 言って、ペレダは4000万ドルを大統領金庫に入れる。この時、金庫室に隠れているバーニーはキーとなる音を録音するのだ。そして、ローラン扮する大統領 はバーニーからテープを受け取り、大統領金庫を開け、赤いボタンを細工するのだ。ローランは異常なしとペレダに告げて去る。その後、ペレダが大統領金庫 に入ってお金を出している時に、バーニーがリモコンスイッチを押すと、扉が閉まってペレダを閉じ込めてしまうのだ。ペレダの腹心の部下であるオルテガは、 大統領金庫室の開け方をまったく知らず、ただ慌てるばかりである。そこへローランから金庫室異常の連絡を受けた本物の大統領がやってきて、ペレダの所 在を聞くと、オルテガはペレダが大臣室にいると嘘をつくが、大臣室にいないと警備兵の報告がされる。不審に思う大統領は、大統領金庫を開けると中にペ レダがおり、これには深い訳がありましてと弁解するペレダであるが、オルテガが嘘を言ったことに不信感を持った大統領は、ペレダとオルテガを逮捕するの であった。
【解説】このエピソードに登場する金庫は三つの音の組み合わせで開くような設定になっている。パイロットの「核弾頭を奪え」でも三つの色の組み合わせで 開く金庫が登場する。いずれも、アイデアとしては素晴らしいと思うが、現在、このような金庫は一般化していない。何故かと考えてみると、色の組み合わせ だと、国旗の色とダンに簡単に見破られたように、身近にある物の色に設定してしまうという欠点がある。また、音の組み合わせだと、本エピソードでも示さ れるように録音されたらそれでお終いという重大な欠点がある。
 バーニーは今回、金庫破りに時間を要し、ほとんどの時間を金庫室の中で費やす。一番感心するシーンとしては、金庫室に通じる秘密の通路に潜んでいる 時、敵がその通路のドアを開けると、バーニーは奥に移動してスクリーン上のダミーのドアを広げて、その裏に隠れるところだろう。また、ペレダが大統領専 用金庫に入った後、リモコンでドアを閉めてペレダを中に閉じ込めてしまうシーンは痛快である。このように最後に敵を金庫に閉じ込めてしまうのは、「王 手!」でも見られ、視聴者受けがいいから再度使われたのだろう。
 ストーリー全体としては、なかなか面白く描かれているものの、IMFの作戦の目的が今一つわかりにくい。ジムとシナモンが人民通商委員会の代表として ペレダに1億ドルの融資の話を持ちかけるが、その後、バーニーが警報を鳴らして金庫強盗を演出し、この1億ドルの融資話はペレダより断られる。融資話を したことでペレダから大統領失脚の具体的な内容を聞き出すことが出来たが、これは指令にもあったように、IMFがあらかじめ掴んでいた情報であり、その真 偽の確認をしたに過ぎない。しかし、金庫強盗が入ったことで、ペレダが4000万ドルを大統領金庫室から着服したことを事前に大統領に知られてしまうのは 身の破滅に繋がる。そこで、人民通商委員会の代表としてその4000万ドルを用立て、ペレダに大統領金庫室を開けさせるという伏線になっているのだ。


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