スパイドラマ倶楽部・別館-スパイ大作戦専門館



エピソードガイド4



88 海の底で口を割れ! Submarine
【目的】新生ナチに先んじて、隠してある資金の所在を突き止めること
【指令】おはよう、フェルプス君。 写真の人物クルーガー・シュテルマンは戦犯として25年の刑期を終え、三日後に東ヨーロッパ共和国の刑務所から釈放さ れる。シュテルマンは第二次大戦中SS、つまりヒトラー親衛隊が占領各国からかすめた、いわゆるSS資金の所在を知る唯一の人物であり、一方、ヨーロッ パの新生ナチの組織はこの莫大な資金をあてに行動を起こそうと計画している。
 そこで君の使命だが、新生ナチに先んじてこのSS資金の所在を突き止めることにある。例によって君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されて も当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。 成功を祈る。
【スタッフ】
脚本: ドナルド・ジェームスDonald James
製作: ブルース・ランズバリーBruce Lansbury
監督: ポール・クラズニーPaul Krasny
【ゲスト出演】
トレーシー:リー・メリウェザー(平井道子)Lee Meriwether as Tracey
シュテルマン:ステファン・マクナリー(北村和夫)Stephen McNally as Kruger Schtelman
サドナー大佐:ラモン・ビエーリ(宮川洋一)Ramon Bieri as Colonel Jaroslav Sardner
ラズコフ:ウィリアム・ウィンターソロ William Wintersole as Raskov
キャレラ:アルバート・クラマー Albert Kramer as Carella
サマーズ:スティーヴ・ロンドン Steve London as Somers
軍曹:ジーン・ティバーン Gene Tyburn as Sergeant
【場所】@指令(媒体): ある倉庫の事務所にある机上の箱の中にあるオープンテープレコーダーを取り出す
A舞台:東ヨーロッパ共和国
【役割】ジム:坊主(トラックの運転手)→ハルトマン大尉(艦長)→東ヨーロッパ共和国警官
パリス:坊主(トラックの運転手)→レドネス→東ヨーロッパ共和国警官
バーニー:トラックの運転手→潜水艦の操作
ウイリー:屋上で見張り→潜水艦の乗組員
トレーシー:催眠銃を発射→SSより派遣されたスパイ
【道具】@催眠銃
A潜水艦:油圧装置で疑似旅行を演出
【削除】(15分30秒)シュテルマンが目を覚まして、トレーシーの姿を発見し、訳を話してくれと聞く
【見所】(08分30秒)パリスがトラックの荷物を落とし、トレーシーが催眠銃を発射する
(12分30秒)警官隊が去った後、IMF一行が倉庫の中に入る
(18分00秒)ジムが潜水艦の艦長としてシュテルマンにおとなしくしろと命令する
(22分30秒)シュテルマンはトレーシーが死にそうだと言うと、パリスは訊問の必要ありと言う
(25分40秒)トレーシーが生きたまま、魚雷管に入れられて発射されるのを見るシュテルマン
(28分30秒)パリスが腕を巻くってSSの刺青を、銃を奪ったシュテルマンに誇らしげに見せる
(38分20秒)敵の攻撃で損傷を受けて潜水艦は浸水し、ジムとパリス以外は司令室を出る
(41分10秒)パリスをカプセルに閉じ込めて浸水させ、死体を浮かべれば敵も安心とジムが言う
(43分20秒)サドナー大佐は倉庫が怪しいと気がつく
(44分40秒)77326、スイスナショナル銀行の口座番号を言うシュテルマン
(47分30秒)サドナー大佐を見てシュテルマンは、おめでとう資金のありかを聞き出したなと言う
【疑問点】@シュテルマンとサドナー大佐のその後については劇中では語られていない。
【粗筋】25年もの間SS資金のことを何も知らないと言い続けてきたシュテルマンも、後二日で釈放という日、ウイリーの合図により僧侶に扮したパリスとジム がトラックの荷物を落として護衛車の視界を遮った後、トレーシーがシュテルマンの車に催眠銃を発射して車ごと近くの倉庫に入れる。異常に気づいた警官 隊はシュテルマンの車の行方を捜すが、トラックをぶつけられたとバーニーが証言した方向に行ってしまう。その隙にIMFメンバー全員が倉庫に逃げ込む。そ して、シュテルマンが目を覚ますと潜水艦の中におり、トレーシーが今にも死にそうな状況で、サドナー大佐の訊問で自白させられたと思わす。ジムは潜水 艦の艦長として威張り散らし、トレーシーを生きたまま魚雷管に入れて発射するという非情さを見せつける。隙を見てシュテルマンはパリスから銃を奪い、状 況説明をさせる。そして、シュテルマンがサドナー大佐は訊問の神様だという発言に、ジムもパリスもシュテルマンが口を割ったという疑いの目を向けると、シ ュテルマンは喋っていない、その証拠にSS資金はちゃんとあるし、本国に帰るのが待ち遠しいと言うのである。その後、潜水艦が敵の攻撃を受けて大きく揺 れて照明も点滅し、損傷を受けて浸水したということで、パリスとジム以外の乗組員は司令室から離れる。そして、ジムはパリスをカプセルに閉じ込めて水浸 しにし、一つでも死体が浮かべば敵も安心するとシュテルマンに告げる。そして、救命胴衣をシュテルマンにもつけて、ジムは脱出しようとする。すると、シュ テルマンは命が惜しんじゃなく、自分の名誉を晴らして欲しいので口座番号を教えると言うが、ジムは軍人だからSS資金には興味がないと告げて、さっさと カプセルに入ってしまう。そして、シュテルマンは口座番号を何度も繰り返して叫ぶのである。ジムはパリスと共に警官の服に着替えて脱出した後、銃撃戦 のテープを流す。サドナー大佐が倉庫に入ると、シュテルマンが穴から出てくるところで、お互いに驚くのである。シュテルマンは"おめでとうサドナー大佐、 土壇場にきてとうとうSS資金のありかを聞き出したな。" これを聞いたサドナー大佐は呆れて大きな声で笑い続けるのであった。
【解説】この「海の底で口を割れ!」は、「スパイ大作戦」の代表される作戦やトリックを集大成したような作品であり、洗練されたストーリーの完成度も高く、 名作中の名作と言えよう。一度このエピソードを見てしまうと、忘れることができなくなるほどだ。具体的には、第1シーズンの「大量殺戮者」で使用された時 間のトリックと「列車偽装作戦」で使用された偽似旅行をミックスし、敵はナチスの関係者で、最後に大金が隠されている秘密の銀行口座番号を吐かせると いう「第三次世界大戦」で見られた結末を迎える。
 IMFは25年間刑務所に収監されているシュテルマンを催眠銃で眠らせて拉致し、近くの倉庫の中に設置した潜水艦に連れ込む。この潜水艦は油圧装置 が取りつけられたもので、例によって実際には動かないが、海の底にいるように見せかけるように計器なども作動する。シュテルマンが目を覚ますと、潜水艦 の中にいることに驚くとともに、ジムとパリスの姿を見て味方によって助けられたと思い込む。シュテルマンの前ではジムとパリスが対立する作戦を取り、ジ ムは冷酷な軍人として演じて見せ、トレーシーを生きたまま魚雷管に入れて発射したり、パリスをカプセルに閉じ込めて艦外に放り出してしまったりという残 忍なところを見せつける。そして、潜水艦が敵の攻撃を受けて制御不能になることを演じ、ジムがシュテルマンに救命胴衣を渡してさっさとカプセルに入って 脱出しようとするのだ。
 ジムは軍人だから隠し資金に興味がないと突っぱねるが、シュテルマンは命が惜しいのではなく、自分の名誉のために同胞に伝えて欲しいと言って、口座 番号を何度も繰り返して喋ってしまうのであった。25年間も警察の執拗な訊問を受けて全く資金の在り処を言わなかった男を、IMFの自分の自尊心から喋ら せてしまうという作戦はものの見事にはまってしまった。
 フィナーレは、やっとの思いで潜水艦から出てきたシュテルマンの前に現れたのは、ずっと彼を訊問し続けてきたサドナー大佐であり、お互いに顔を見てび っくりするのである。そして、シュテルマンが、"おめでとう、サドナー大佐。土壇場に来てとうとうSS資金の在り処を聞き出したな。"と言うと、サドナー大佐は 倉庫中響くような大きな声で笑い続けるのだ。その笑い声はドラマが終わっても視聴者の脳裏に焼きつくほどの強烈な印象を残すものだ。


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