スパイドラマ倶楽部・別館-スパイ大作戦専門館



エピソードガイド4



90 王家の血Part1 The Falcon (Part 1)
91 王家の血Part2 The Falcon (Part 2)
92 王家の血Part3 The Falcon (Part 3)
【目的】将軍の王位継承権を獲得しようとする策謀を封じ、王家の三人を救うこと
【指令】おはよう、フェルプス君。 写真の人物ステファン王子はその国の正当な王位継承者であるが、半月前交通事故で死去したと報ぜられた。しかしそれ は表向きで、実はまだステファン王子は生きており、サバティーニ将軍によって刑務所に監禁されている。というのも将軍が王子のフィアンセ、フランチェスカ と無理に結婚したいがためである。その結婚によって王位継承権を獲得し、王子もフランチェスカもその従兄弟である現国王ニコライをも亡き者にして王座に 就き東側諸国と同盟を結ぼうというのがサバティーニ将軍の腹である。
 そこで君の使命だが、将軍のこの策謀を封じ、ステファン、フランチェスカ、ニコライの三人を救うことにある。例によって君もしくは君のメンバーが捕らえら れ、あるいは殺されても当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。 成功を祈る。
【スタッフ】
脚本: ポール・プレイドンPaul Playdon
製作: スタンレイ・カリスStanley Kallis
監督: レザ・S・バディイReza S. Badiyi
【ゲスト出演】
トレーシー:リー・メリウェザー(平井道子)Lee Meriwether as Tracey
ニコライ:ノエル・ハリソン(前川功人)Noel Harrison as Nicolai
フランチェスカ:ダイアン・ベーカー(池田昌子)Diane Baker as Francesca
サバティーニ将軍:ジョン・ヴァーノン(久松保夫)John Vernon as General Ramon Sabattini
ヴァルガス大佐:ローガン・ラムジー(島宇志夫)Logan Ramsey as Colonel Vargas
神父:マルセル・ヒラレ Marcel Hillaire as Bishop
ステファン王子:ジョセフ・リール Joseph Reale as Prince Stephan
ロゼック:ダル・ジェンキンス Dal Jenkins as Rousek
警備:トニー・ジョージオ Tony Giorgio as Foyer Guard
ツアー案内:ジョシュ・アダムズ Josh Adams as Tour Officer
女:マジョリエ・ベネット Majorie Bennett as Woman
男:ジェーソン・ヘラー Jason Heller as Man
ブカール:ジャック・ドナー Jack Donner as Buccaro
ルームオフィサー:ウィリアム・ヴィスティーン William Visteen as Maintenance Room Officer
階段の事務官:ジョン・ローズ John Rose as Upstairs Officer
ステファンの警備:ピーター・キルマン Peter Kilman as Stephan's Guard
受付:アーライン・アンダーソン Arline Anderson as Receptionist
【場所】@指令(媒体):駐車場みたいなところにスピーカーがたくさんぶら下がっており、その内の一つのスピーカーの内部にあるテープを聞く
A舞台:モンタビア
【役割】ジム:アムステルダム文化協会のメンバー→ベネディクト
パリス:ザストロ(奇術師)→ニコライ国王に変装
バーニー:王冠のすり替え→フランチェスカ救出→ガス会社作業員
ウイリー:奇術用品運搬車の運転手→神父の車のタイヤ破壊→馬車使い
トレーシー:マダム・ビンスキー(透視術師)
セバスチャン:パリスに変装
【道具】@スクリーンから飛び出てくるように見せる装置
A偽物の王冠・装飾品
B杖:ボタン電池状の物を出したり、タイルの四隅に液体を出す
Cタイル大ののこぎり
D探知機:ジムが杖から出した液体の位置を探知する
E神父の車をパンクさせる爆薬
F床を支える支柱
G銃:1発目実弾、2発目空砲
H薬:フランチェスカを仮死状態にする
I麻酔注射:奇術でニコライに打ち失神させる
J酸素ボンベ:霊安室のフランチェスカに酸素を送る
K金庫のダイヤル番号探知機:ダイヤルが合うと電流が流れるテスターのようなもの
Lステファン王子の監房内で踏み潰す薬:バーニーに穴を開ける場所を教える
【削除】(@11分30秒)国の財政は崩壊しているとヴァルガス大佐は将軍に話をする
(A07分00秒)パリスがフランチェスカに銃と薬を渡してきたとトレーシーに言う
(11分50秒)結婚式の時間になっても神父が現れず、遅いと将軍がヴァルガスに言う
(B02分30秒)粗筋の中のセバスチャンがパリスに変装するシーン
(13分10秒)ヴァルガス大佐がブカールを呼び、将軍暗殺を指示する
【見所】(@09分00秒)アムステルダム文化協会が来たと守衛から連絡を受け許可する将軍
(17分40秒)ウイリーが奇術用品を宮殿内に入れるところを守衛に中を見せろと言われる
(23分20秒)刑務所でキスをするステファンとフランチェスカ、それを見る将軍
(29分30秒)ザストロ(パリス)が到着して喜んで迎い入れるニコライ国王
(32分50秒)パリスの隼が飛んで警報機が鳴り、その間バーニーが角型のこぎりで床を切る
(37分50秒)王冠と装飾品を偽物とすり替えるバーニー
(40分10秒)神父の車が通った時、仕掛けた爆薬のリモコンのスイッチを押すウイリー
(45分00秒)パリスはフランチェスカの部屋の窓から助けに来たと言って薬と銃を手渡す
(A06分10秒)ここまでPART1の粗筋で、ここからPART2スタート
(08分40秒)バーニーが床にドリルで穴を開け、ダイヤモンドを下にいるジムに落とす
(11分30秒)バーニーが腐っている床から下に落ちて気を失う
(15分30秒)ニコライに注射を打ってパリスはニコライとすりかわり、セバスチャンがパリスになる
(20分30秒)バーニーはジムに目が見えないと緊急連絡すると、ジムが地図を頼りに無線で誘導する
(25分10秒)銃を持っているとニコライが叫び、フランチェスカが二発目を胸に受けて死ぬ
(34分10秒)ビンスキーは残るとヴァルガス大佐に言われて、独りで帰るパリス(セバスチャン)
(35分30秒)バーニーがフランチェスカを救出する
(39分40秒)ダイヤモンドを持ってジムが参上すると、保管庫の宝石が全部偽物と判明する
(42分50秒)マダム・ビンスキーはヴァルガス大佐に電話を入れ、刑務所に行くなと告げる
(47分30秒)右49、左73、右7と金庫の番号をヴァルガス大佐に教えるビンスキー
(B06分50秒)ここまでがPART1と2の粗筋で、ここからPART3スタート
(12分40秒)ヴァルガス大佐より将軍に電話が入り、宮殿まで戻るようにお願いする
(25分10秒)ブカールがニコライの部屋に時計の爆弾を仕掛け、盗聴機も付けてあると報告する
(30分40秒)ニコライの部屋で爆発が起こり、将軍とパリスが重傷を負い、パリスの正体がばれる
(33分00秒)将軍がブカールとヴァルガス大佐を射殺する
(38分40秒)将軍はジムがステファンを救出すると気づき、電話が繋がらずに刑務所に行くと言う
(45分10秒)バーニーが監房の壁を切り、ジムとステファンは脱出するが鎖が絡んで動けない
(47分00秒)将軍がジムを撃つとそれがスクリーンだとわかり、気を落として絶命してしまう
【疑問点】@ジムが杖の下からボタン電池のようなものを廊下の隅に植え込んだが何だろう?
【粗筋】ジムはアムステルダム文化協会の一行に混じって宮殿内を見物し、杖から器具を廊下に打ち込む。ウイリーはザストロの奇術用品の搬入で宮殿に 入り、棚を電動ドライバーでネジを打ち込んでいる間に、バーニーは奇術用品の箱の下から角型のこぎりでタイルを切り取って床の下に潜る。サバティーニ将 軍は結婚式の前に刑務所に行き、ステファンとフランチェスカに最後の憩いの時間を与える。そして、結婚式が滞りなく終わったらすぐに処刑してしまえと看 守に命じる。ザストロとしてパリスは透視術師のマダム・ビンスキー(トレーシー)と一緒に到着し、国王ニコライに迎え入れられ、いくつかの手品を披露する。 パリスは隼を飛ばして警報機を鳴らし、その隙にバーニーはジムの印をつけた床を角型のこぎりで切り取り、騒ぎが落ち着くとバーニーは床から出てきて、王 冠と装飾品を偽物とすり替えるのだ。一方、ウイリーは神父の到着を遅らせるために神父の車を爆薬でパンクさせてしまう。そこへウイリーは馬車に乗ってや ってきて、神父の予備タイヤの交換を手伝うが、予備タイヤもパンクさせてしまう。そして、神父を馬車に乗せて宮殿とは反対方向に進んで時間稼ぎをするの だ。パリスはフランチェスカの部屋の窓から助けにきたと告げて、一発目は実弾、二発目は空砲の銃と飲むと仮死状態になる薬を手渡す。そこへ将軍が入っ てきて、銃を隠すフランチェスカに何を隠そうとしているかと見ようとするが、パリスがコインを猫に投げつけ、猫が驚いた隙にフランチェスカは銃を隠し、ステフ ァンの写真が入っているペンダントを手に持つ。そこへヴァルガス大佐が入ってきて、フランチェスカの頭に王冠を載せるのだ。
 バーニーは床にドリルで穴を開け、ダイヤモンドを下にいるジムに落とす。ブカール大尉はヴァルガス大佐に将軍を殺せば利権をすべて牛耳ることができる と企むのだが、そこへ将軍が入ってきて、ブカールは野心家で何を考えているかわからん、俺についてくれば間違いないとヴァルガスに釘を刺す。一方、ウイ リーの工作により神父の到着が遅れ、1時ちょうどの約束だと言うパリスに将軍は結婚式が先だと譲らない。しかし、ニコライが結婚証明書にサインしないと 言って、パリスの奇術ショーを先に行うことになる。そのショーでニコライ国王を注射で眠らせてパリスがニコライに変装し、パリスをセバスチャンが務めること になる。一方、バーニーは腐った床から転落して気を失い、目が覚めると失明しており、ジムに緊急連絡をする。バーニーは作戦の中止を提案するが、ジム は地図を頼りにバーニーを無線で誘導する。そして、司教が到着して結婚式が始まろうとした矢先、フランチェスカがヴァルガス大佐に連れられて会場に入る が、フランチェスカが銃を持っているとニコライ(パリス)が叫ぶと、銃が発射されて二発目がフランチェスカの胸に当たって死んでしまうのだ。ヴァルガス大佐 はマダム・ビンスキー(トレーシー)にこのことがわかっていたのかと聞くと、トレーシーが将軍は必ず失敗すると告げて、詳しくは後程と含みを持たせる。霊安 室に入れられたフランチェスカは密室状態にあり、バーニーは目が見えない中、ドリルで壁に空気穴を開けて酸素ボンベで空気を送り、フランチェスカを救出 する。一方、ジムは本物のダイヤモンドを持参して将軍を訪ねる。そして、調査の結果保管室の王冠と装飾品が全部偽物とわかり、ジムは宝石のすり替え の主犯はステファン王子だと主張して、本物の隠し場所はステファン王子が知っているから会わせて欲しいと頼む。マダム・ビンスキーからヴァルガス大佐に 電話が入り、刑務所に行くなと忠告され、ジムと将軍の二人が刑務所に向かう。ヴァルガス大佐はトレーシーと話をし、将軍を殺して宝石を持って逃げること と助言され、信じようとしないヴァルガスに将軍の処刑リストの中にヴァルガスの名前が入っているとビンスキーは指摘する。パリスが金庫のダイヤル番号を 無線で知らせて、トレーシーはヴァルガスに将軍の金庫のダイヤル番号を教えると、ヴァルガスは早速処刑リストを見たいと言って将軍の部屋に向かうので ある。
 バーニーはアーングリム刑務所のガス管に銃を撃ちこんでガス漏れを起こし、ウイリーは電話回線に細工して、バーニーはガス会社作業員として刑務所内 に入る。暗殺者リストに自分の名前を確認したヴァルガスはブカール大尉を呼んで将軍暗殺を指示し、ニコライ(パリス)も一緒に片づけようとするのだ。そし て、刑務所にいる将軍に電話を入れて内々にお耳に入れたいことがあると言って宮殿に呼び寄せる。バーニーはエレベーターシャフトから下に降り、ステファ ン王子がいる監房の隣の壁から穴をあける。ブカールは爆弾の時計をニコライの部屋に持っていき、盗聴機も仕掛けてあり、リモコンのスイッチを押せばいつ でも爆破できるとヴァルガスに伝える。心配になったヴァルガスはこのことをマダム・ビンスキー(トレーシー)に相談するが、ニコライも一緒に殺してはいけな いと忠告され、ヴァルガスはブカールに止めるように電話するが通じない。そして、将軍が帰ってきてニコライの部屋に入り、ニコライが将軍を呼んだ心当たり がないと言って将軍が部屋から出ようとした瞬間、ブカールはスイッチを押してしまうのだ。しかし、将軍は死なず、ニコライもパリスとばれてしまい、将軍はブ カールとヴァルガスを射殺してしまう。異常事態にトレーシーはジムに緊急連絡を入れるが捕まってしまう。ジムはウイリーに刑務所に入る外線を繋がらない ようにしてくれと指示し、その間監房にスクリーンを降ろし、ジムとステファンの映像を映すのだ。捕まったパリスとトレーシーを前に将軍は奇術を使ってニコラ イとフランチェスカを救出したことを皮肉にも褒め、ステファンをどう救い出すかと聞き、ベネディクト(ジム)の存在に気づく。電話が通じないということで、刑務 所に向かう将軍である。バーニーは監房の壁を切り、ジムとステファンを救出する。将軍が刑務所に到着し、監房にいるジムに向かって発砲するが、それが スクリーンであることがわかる。スクリーンの裏側を見ると、壁に穴が開けられ、二人が逃げた後であることがわかり、気を落とした将軍は倒れて絶命するの であった。
【解説】「王家の血」は「スパイ大作戦」史上唯一の三部作であり、壮大なスケールでシリーズを代表するトリックや作戦が随所に折り込まれ、登場する小道 具も素晴らしく、見事な作品に仕上がっている。また、美しい王女とハンサムな王子がお互いに愛し合っているのに、それを引き裂く将軍が王女を略奪して結 婚するという構図は、どこかメルヘンを彷彿させるような雰囲気を持っている。今回、IMFの使命の目的は将軍を排して王室のステファン王子、フランチェスカ 王女、ニコライ国王を救出することである。
 パート1は、手品師パリスがニコライ国王に迎え入れられ、結婚式の余興としてそのマジックを披露するための準備を装い、バーニーが宝石類を全部偽物と すり替えてしまう。ウイリーは結婚式で呼んである神父の車をパンクさせ、結婚式の時刻を遅らせる工作をする。そして、パリスはフランチェスカに助けにきた と告げて、トリックの小道具を手渡す。
 パート2は、パリスの奇術ショーでニコライ国王を眠らせて救出し、パリスがニコライに変装する。結婚式ではフランチェスカが銃で自殺したことを偽装し、霊 安室よりバーニーが救出する。ジムは本物の宝石類を持参してサバティーニ将軍に見せて、宮殿の宝石が全部偽物であることを気づかせて、主犯はステフ ァン王子であることを仄めかす。一方、予言者マダム・ビンスキーに扮するトレーシーはヴァルガス大佐に将軍は破滅し、大佐の命を狙っていることを予言す るのだ。
 パート3は、ステファン王子を監禁している刑務所にガス漏れ騒ぎを起こしてバーニーが潜入し、映像トリックの準備をする。トレーシーは将軍の暗殺リスト に大佐の名前があることを示し、大佐は部下に将軍の暗殺を命じる。ジムと将軍は刑務所に行きステファン王子を訊問するが、王子は何も答えず、大佐より 呼び出された将軍はジムを残して宮殿に戻るのだ。
 宮殿に将軍が戻ると、爆発が起こり将軍とパリスが重傷を負ってしまう。パリスとトレーシーの正体がばれてしまい、トレーシーがSOSをジムに発するが、 将軍に捕まってしまう。大佐らを射殺した後、二人に訊問をする将軍はニコライとフランチェスカを救出したIMFの作戦を褒めるとともに、ステファン王子をジム が助けようとしていることに気づく。電話が通じないことから、将軍は重傷であるにも関わらず、刑務所に向かうのである。将軍が刑務所に着くと、ステファン 王子とジムは脱出した後で、監房内は蛻の殻になっており、将軍は絶命するのであった。
 この超大作の中で、IMFのメンバーはいつも以上に大活躍をする。パリスは奇術師ザストロとして、思う存分そのテクニックを披露する。パリスの前任者ロ ーランもマジックの達人であったが、腕前はローランに引けをとらない。残念なことに、パリスがマジシャンを演じるのはこれが最後となってしまった。そのマジ ックショーの中で、ニコライ国王を眠らせて、自らがニコライに変装するものの、爆破事件で瀕死の重傷を負って正体もばれてしまうというハプニングに巻き込 まれてしまう。
 バーニーはいつものように裏方を演じ、タイルと同じ大きさの正方形の鋸をかついで、床下からタイルを切り落として宮殿の宝石を全部偽物とすり替えてし まう。この鋸は見た目にもとても重そうで、バーニーの四苦八苦している姿は見ていて気の毒である。また、フランチェスカを助ける準備のために霊安室に向 かう途中で、腐った木を踏んで転落し、失神してしまうシーンは緊張感が走る。「魔薬B−230」でもバーニーは貯水塔に登る途中で、錆びた梯子に足を踏み かけて転落して失神した経験を持つ。今回は、さらに失明してしまったということで、なおさら任務を困難にするが、ジムの無線での誘導で、無事フランチェス カを救出する。また、最後は刑務所のエレベーターシャフトからステファン王子を救出するお膳立てをするのだ。
 ウイリーは将軍とフランチェスカの結婚式を遅らせるために、神父の車のタイヤをパンクさせた後、神父を助けるふりをして予備のタイヤもパンクさせ、さらに 自分の馬車に神父を乗せて宮殿とは反対方向に走らせてしまい、時間稼ぎに大いに寄与するのだが、見ていて笑えるほどコミカルに描かれている。
 ジムに関しては、パート1ではあまり出番がないが、パート2ではバーニーの危機に無線で誘導するといったアシスト、さらに、本物の宝石を持参して将軍の 前に出現する、ステファン王子を救出するキーマンとして登場する。そして、パート3では刑務所に出向いてステファン王子を訊問しつつ、看守の隙を見て映 像のトリックを使いバーニーとともに王子を救出するという一番困難な役割を見事にこなすのだ。また、トレーシーのSOSの電話に対しても、電話線を切って しまうという適切な処置をし、リーダーとしての資質が素晴らしいことを見せつける。
 トレーシーは「第三次世界大戦」では看護婦、「ロボット」では情報長官の部下、「海の底で口を割れ!」では潜水艦の魚雷管に入れられる瀕死のスパイを これまでに演じてきた。どちらかと言うと、目立たない脇役に過ぎなかったが、本エピソードでは予言者マダム・ビンスキーということで、存在感溢れる重要な 役柄を得て、まさに彼女のはまり役になったとも言えよう。しかしながら、本作が彼女の最後の出演になってしまい、ファンにとっては非常に残念なことであ る。初回放映当時、彼女がシナモンの後継者に決まったと思った人がかなりいたそうだ。
 非常に贅沢に製作された本エピソードであるが、この後、「スパイ大作戦」では三部作どころか二部作も作られていない。この作品が放映された頃には、既 に「スパイ大作戦」の人気も陰りを見せ始めており、今後は制作費も抑えられるとともに、視聴率も次第に下降線をたどっていく運命になるのである。そういう 状況下、結果としてこの「王家の血」の三部作は衰えゆく「スパイ大作戦」に最後の花を咲かせるものになってしまったのは、残念極まりないことである。


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